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エスロンタイムズ 83号

福生市の雨水幹線改修工事に新しい管路更正工法(レール不要・長距離・超大口径対応)
「エスロンRCPリフトイン工法」が活躍

更生管エスロンRCPを挿入する運搬台車とバッテリーカー

福生市を東西に横切る雨水幹線「南部幹線(中央6号線)」改修工事に、セキスイが新しく開発した管路更正工法「エスロンRCPリフトイン工法」が採用され、従来のパイプラインパイプ工法をさらに推し進めた施工性(レール不要・長距離・超大口径まで施工可能など)を実証。工期短縮、コストダウンなど老朽管更正に大きな威力を発揮しました。

雨水幹線改修にエスロンRCPリフトイン工法

都心から西へ約40km、多摩川に沿って広がる福生市。武蔵野の豊かな水と緑に恵まれ、縄文時代中期には既に大規模な集落(長沢遺跡集落跡)が形成されていたといわれるこの街はまた、行政面積の約32%を米軍・横田基地が占める基地の街としても知られている。
その横田基地の雨水を多摩川に導く「南部幹線(中央6号幹線)」改修工事に、セキスイが新しく開発した「エスロンRCPリフトイン工法」が採用されたと聞き、JR青梅線福生駅から徒歩5分ばかりの距離にある福生市役所を訪問。

中込めプラント
既設HP管の損傷状況
作業効率を高めるカゴ型運搬台車

防衛庁とタイアップ改修
新工法の施工性を実証

同市建設部下水道課の設楽政男課長さんから南部幹線改修工事と新工法についてお話を伺った。
「南部幹線は昭和40年から42年にかけて築造された雨水幹線で、既設管(コンクリートヒューム管)の損傷が激しく、放置すれば埋没等の危険度が大きくなると判断。防衛庁とタイアップして改修工事を行うことになった」
福生市で一番古いこの南部幹線は上流部で横田基地、また、マンホールを介して周辺の雨水を集めながらJR八高線・青梅線を横切り、玉川上水をくぐって農業用水路として拡幅した下の川に至る総延長1138kmの雨水幹線。



一部には鉄筋が切れるほどの亀裂が生じ(支保工で暫定補強)、改修が急がれていたところにタイミング良く新しい管路更正工法「エスロンRCPリフトイン工法」が開発され、種々工法を比較検討された結果、同改修工事にご採用いただいたもの。
その経過について設楽課長さんは、「築造当時は開削工法だったが、現在では交通量も多く、既設管を供用しながら管路更正ができる工法を模索していたところ、新しくエスロンRCPリフトイン工法が開発され、種々の更正工法の中でも施工性、経済性ともに優れていると判断した。
昨年12月25日に始まった改修工事でも予定より先行して進み、隣接住居からの騒音に対する苦情もゼロに等しく、幹線道路下での工事であったが交通制約上のトラブルもなかった」と、喜んでくださった。

ツーサイズダウンで更正
約2kmの長距離施工も

この南部幹線改修工事に使われたエスロンRCP(強化プラスチック複合管)は、上流部1800mm(既設管2210mm)、下流部2000mm(同2300mm)。
従来のパイプインパイプ工法では既設管に対しスリーサイズダウンが常識のところ、エスロンRCPリフトイン工法採用によりツーサイズダウンでの管路更正になっている。
新しい管路更正工法エスロンRCPリフトイン工法の秘密は、更正管搬入のためのレール布設を不要にしたカゴ型運搬台車ならびに低重心型バッテリーカー。
レール自体が不要になったことにより、手間、スペース、資材を省略することができ、コストパフォーマンスと更正後の流量特性に優れた管路として更正することができるようになった。また、運搬台車をバッテリーカーに連結搬入することにより、従来のパイプインパイプ工法を遥かに上回る約2kmの長距離施工が可能になり、工期も大幅に短縮することができる。
エスロンRCPの布設は、発進縦坑部に吊り降ろしたあと、管の中に運搬台車を引込み、前後に装備したジャッキで担ぎあげるだけ。

管路更生工事を行った福生市熊川地内の道路

画期的な管路更正工法、今後の改修にも採用検討

こうしたエスロンRCPリフトイン工法を採用して南部幹線改修工事を終えられた感想について、設楽課長さんは、「既設管を活かしながらエスロンRCPを挿入、中込めを行ったことにより更正管路全体の埋設強度が増し、今後30~50年は十分供用できるものと思っている。
更生後の流量特性またはコスト面で優れた画期的な管路更生工法であることが分かったし、更生管の内面が滑らかで、これからの維持管理がしやすくなるのも良い。
今後、福生市でも逐次改修すべき時点がでてくるので、今回採用した経緯を踏まえ、エスロンRCPリフトイン工法を採用していきたい」と、話してくださった。
なお、今回の改修工事でエスロンRCPリフトイン工法が採用されたのは上流部455.1m(更生管1800mm、既設管2210mm)と下流部186m(更生管2000mm、既設管2300mm)の2区画。
中間部については、既設管の損傷度合いが軽度ななめ特殊モルタルで補強することなっている。

  • 1.発進坑にエスロンRCPをセット

  • 2.更生管に運搬台車を引き込む

  • 3.ジャッキ操作で担ぎ上げる。

  • 4.バッテリーカーを接続搬入

  • 5.既設管内に運搬(レール不要)

  • 6.エスロンRCPを接続

  • 7.エアーモルタルを中込め

  • 8.出来上がった更生管路の内部

管路更生に大きな利点、既設管ほぼ同等の流量

また、今回の福生市南部幹線改修工事の設計にあたられた新構造技術 東京支店都市開発部(東京都江東区亀戸1-42-20)の渡邊泰寅理事部長さんは、「一部ではHP管の鉄筋が切れるなど、単なる補修では埋没等の危険を回避できない状態にあったため、隔壁による背割工法やバイパス工法も場所的に無理があった。
そこでパイプインパイプ工法による管路更生を考えていたが、パイプインパイプ工法をさらに推し進めたエスロンRCPリフトイン工法が開発され、既設管内径にツーサイズダウンで更生でき、長距離施工ができることなどから採用を推薦した」と、話してくださった。
更生後の流量特性(エスロンRCP粗度係数0.010、HP管0.013)が良く、内径1800mmのエスロンRCPで2210mmのHP管とほぼ同等の流量を確保できること。
また、長距離施工によって発進縦坑が少なくて済むことなどに魅力を感じていただいているわけで、「古い管路の更生工法としてエスロンRCPリフトイン工法は、非常にメリットのある工法」と、お褒めいただいた。
なお、南部幹線の管路更生にあたっては、より確実に流量を確保するためにHP管の繋ぎごとに1本ずつ計算して更生管の布設勾配を決められており、平均的には既設のHP管が2.2%であるのに対し、更生管の勾配は3.6%に設計されている。

トンネル改修など幅広い分野に適応

今回、セキスイが開発し福生市の雨水幹線改修工事でその施工性を実証したエスロンRCPリフトイン工法は、こうした公共下水道工事にとどまらず農業用水の管路更生にも大きな威力を発揮するものと期待されており、鋼管あるいはトンネルなどの改修にも適したシステムとなっている。
適用口径(エスロンRCP)は900mmから2400mmで、既設管の内径が小さい場合やバッテリーカーが使えない場合は、カゴ型運搬台車を人力で搬入することもでき、また、曲線管路にも対応することができる。