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エスロンタイムズ 92号に掲載されました。

千葉県営小糸川地区かんがい排水施設改修にセキスイが開発したリフトイン工法

千葉県営小糸川地区かんがい排水施設のパイプライン化にリフトイン工法(第一号トンネル入口)

水の効率利用を目指してかんがい排水施設を改修

君津市の市街地から房総スカイラインに向かい、料金所の手前で右折して国道410号線を暫く南下すると、左手に風光明媚な三島湖が見えてくる。釣りを楽しむ人のボートが舳先を連ねて浮かび、四季折々に色を変える周りの山々が映える湖水の水が三島ダムの長い堤(堤長127.7m、堤高25.3m)を越え、白い絹布のように流れ落ちたところから始まるのが小糸川。今回、水の効率化を目指して改修事業が進められている小糸川地区県営かんがい排水施設(受益面積=君津市1050ha、富津市557ha)の主水源である。

老朽化したトンネルをリフトイン工法で管更生

平成11年度から工事が始まった同改修事業(総工費約145億円)は、老朽化した用水路のパイプライン化をはじめ、大岩取水工、人見揚水機場、反復機場二箇所、その他制御施設などを建設するもの。このうち三島ダム直下の渓谷で取水する大岩取水工が既に完成。平成13年度から全長42.3kmにわたる用水路工が始まった。平成13年度の用水路工は、いわば農業用水の大動脈にあたる大幹線用水路(4,443m)の一部。

カゴ型運搬台車によるエスロンRCP搬入
カゴ型運搬台車の前輪を乗り上げて接合

施工性向上にリフトイン工法
軌条及び台車不要が決め手に

完成後40年の歳月を経て老朽化し危険な状態にあった馬蹄形のトンネルに強化プラスチック複合管を布設。水効率が良い安全な管路として新しく生まれ変わらせる、この工事にセキスイが開発した管路更生工法「リフトイン工法」(カゴ型運搬台車と一体化した低床式バッテリーカーを使用。軌条設置の手間と台車のためのスペースをなくし、しかも長距離運搬が可能なセキスイ独自の工法)が活躍している。
大幹線用水路の改修現場で千葉県木更津津土地改良事務所農業水利課の三輪則雄副主幹さんとお目にかかり、今回の工事目的と強化プラスチック複合管エスロンRCPによる管路更生工法「リフトイン工法」(第1工区)についてお話を伺うと
「現況の用水路は開水路タイプであり、末端まで到達するのに長時間を要し、また水路ロスが多く水管理に支障をきたしていた。
この用水路をパイプライン化することで水効率を高め、デジタルで集中管理することにより末端まで公平に水を配分することが改修工事の目的。

リフトイン工法を採用したのは、トンネル(高さ2050mm、底辺1500mm、最大幅1700mmの馬蹄形)が狭く、この中に必要断面(口径1350mm)の強化プラスチック複合管を円滑に布設するため。
従来の鞘管工法と違って軌条および台車スペースがいらないリフトイン工法だと必要断面の確保が容易で、作業性が良く搬入口も少なくて済む。
歩掛かり調査を行っているところだが、軌条を設置しないだけでもコストダウンにつながる」と話してくださった。

経済性と施工性に優れ
スピーディなリフトイン工法

同改修工事の設計に当たられた(株)栄設計技術部の外原敏雄課長さんは、「既設隧道は7~8割の水深で流速が毎秒1.2~1.5mなのに対し、粗度係数が小さい強プラ管だと満水状態で毎秒2~3m。 必要流量を確保できることから強プラ管の採用になった。リフトイン工法は思っていた以上に進行が早く、他の工法に比べると軌条を設置する必要がないなど場内の整備が簡単」と、強プラ管またリフトイン工法の性能と施工性を高く評価してくださった。
また、同社の石坂篤保課長代理さん、津野憲造さんも異口同音に、「現場をみてスピーディで施工性の良さを実感した」とのこと。

軽くて施工性が良いFT-R

コスト優位のリフトイン工法
FT-R継手の施工性も抜群

リフトイン工法による1工区の工事を担当された新興土建(株)の保坂和宏現場代理人さんは、「トンネル内の強プラ管設置方法を検討していたところ、軌条式の他にリフトイン工法があることがわかった。
調べてみると、技術水準を満たしている上に、軌条や台車が不要でコスト優位が明らかなことからリフトイン工法の採用を発注者に承認してもらった。実際に施工してみるまで半信半疑なところもあったのだが、思っていた以上に施工性、経済性が良かった。
トンネルの状態次第だが、多少の凹凸がある程度なら基礎コンクリートもいらないのでは」など、最大級の賛辞を寄せてくださった。
また、同社の高木淳也工事課長さんは、「リフトイン工法は良く考えられた工法。
継手に使ったエスロンFT-Rも軽くてコンパクトで施工性が良い。これが同質曲管だと、どう搬入していいのかわからない現場だった」とリフトイン工法また継手の施工性を高く評価してくださった。
なお大幹線用水路には1号トンネルとその先の2号トンネル(4,630m)があり、順次パイプライン化される予定。